余計な考えを振り消し、靴を履き替えて急いで校門まで向かう。
「お待たせ……って誰?」
見たことのない顔。
記憶力がよくない俺だけどこの男は本当に見たことがない。
スラッとした高身長、グレーのパーカーにジーンズ。シンプルな服装だけど、それが似合っている綺麗な顔立ちをした男。
これだけ綺麗な顔立ちをしているなら、なおさら忘れるわけねぇし覚えている。
だから、本当にこの人と俺は初対面なんだと思う。
「初めまして。突然すみません。
僕、昴っていいます。立花咲都さんですよね?」
なんで俺の名前を知っているんだ?
昴という男は優しそうに笑うとぺこりと頭を下げた。
「あー、はい。何の用ですか?」
「少しお話がありまして……辰巳夏葵の話なんですが」
「ナツの……?」
こいつはナツのなんなんだろう。
フツフツと心の中に湧き上がる黒い感情。