【咲都side】


「おーい、立花」

「はい!」


部活が終わり、校門にいる先輩がまだ靴を履き替えている俺の名前を呼ぶ。

ったく……声でけえな。
校門から昇降口までなかなか距離あるぞ。


「待ち人がいるから急げー!」


また校門から声がした。

待ち人……?

誰だよ。琴音かな?
いや、今日、琴音は健吾と出かけるつってたし。

そうだとするなら……もしかして……

頭の中のスクリーンに愛しい笑顔が映し出されるけど、「いや、ねぇな……」と声を漏らし、一瞬で消し去った。

俺から突き放したんだ。
そして、『会わない』と言われた。

先に突き放したのは俺なのにそう言われた時、心臓を鷲掴みされているような気分に陥り、俺の心に深い傷を残した。