私はあなたのあやつり人形じゃない。
私にだって意思はある。

もう限界だったんだ。学校に行くのも。
都会の雰囲気に合わせて背伸びをするのも。
だから、ここに逃げてきた。


「戻ってくる気はないの?」

「……戻るよ、そのうち」

「いつ?」

「それは……」


なんで、『今すぐ帰れるよ』って言えないんだろう。もうサキとの未練はないのに。琴音と健吾との関係だってもう修復できないほどになっていることが分かったからここに残っている理由なんてどこにもない。


「……彼には会えたの?」

「会えたよ。でも最悪な形でバイバイしちゃった。彼ね、彼女がいたの。知らずにこんなところまで来ていい迷惑だよね」


会いたい、それだけだった。
声を聴いて、目を見て、話をして。

ただ、それだけで満足だったのに……いつの間にかそれ以上の関係を望んでしまっていた自分がいた。