彼が来たということはもう時間はないということだ。
なぜ東京からこんな田舎まで彼が来たのかというのは聞かなくてもすぐにわかった。
「迎えに来たよ」
ほら、やっぱり。
私を連れ戻しに来たんだ。
昴くんとは、私のお母さんの再婚相手の息子さん。
だから、血の繋がっていない兄弟ということ。
私が東京にいた時に唯一心を許していた相手でもある。昴くんは私に無理はさせなかった。そんな優しい子だからここに来るのもきっと躊躇していたんだと思う。
だからこんなにも期間が空いてしまったんだ。
昴くんのことだから必死に抵抗してくれたんだろうなあ、とまるで他人事のようにしみじみと思う。
サキとちゃんとさよならをできた今、向こうに帰っても未練はない……はずだ。