「咲都?」

「あー……ごめん。
練習抜け出してきたんだった。
また終わったら連絡するな」

「あ、そっか。私こそごめんね。
本当に、ありがとう」


琴音のその言葉を聞いて、俺はくるりと180度回転して、すぐに走り出した。

あっぶねぇ……こんなところ琴音には見せられねえ。
ナツのことを思い出していたら涙が出てきたなんて言えるわけがねえ。

泣くつもりなんてなかったのに気づいたら涙がそこまで迫ってきていたんだ。

琴音と反対方向を向いたときに頬を伝った涙。
あと少しで見られるところだったから本当に危なかった。

この涙のせいでどれだけ君のことを想っていたのか思い知らされる。
泣くほど好きで、好きで、何度も『好きだ』と口にしたかった。