「サキ、頑張れ!」
涙が出そうになるのを悟られないように必死に堪えて笑っていると、サキは何も言わずに前を向いて走り出した。
小さくなっていく背中を見つめながら、私の頬にずっと我慢していた涙がこぼれ落ちた。どんどん歪んでくる視界。それでも私はまっすぐに彼だけを見つめていた。
サキの背中が見えなくなる頃には地面には悲しみの印のように丸いシミがいくつもできていた。
「サキ……っ、好きだよ……大好きだよ……っ」
私の虚しい呟きは真夏のなまぬるい風に連れ去られ、消えていった。このまま、風に乗って君に届けばいいのに。
私はどこまでもズルい人間だ。
少しだけ、少しだけ期待してしまっていたんだ。
サキが走り出してから一度くらい私の方を振り向いて様子を気にしてくれるんじゃないかって。
「なのに……一度も振り向かずに行っちゃうんだもん」
私は彼女じゃないし、サキの特別でもない。
ちゃんと分かっていたのに……どうしてこんなにも胸が締め付けられて、えぐられるように痛いんだろう。息をするのも苦しいくらいきみのことが好きで仕方ない。



