「だから、早く琴音のところに行ってあげて。
琴音のことを守れるのは、サキだけだから」
ぎこちない笑顔で言うと、サキは“何を言っているのか分からない”とでも言いたそうな表情を浮かべていた。
ごめん、琴音。
サキには言わないって約束してたけど、私には無理だった。
サキに嘘をついているのも、琴音が苦しんでいるのに何もしないことも。
「どういうことだよ……」
「詳しいことは琴音の口から聞かなきゃ。
あんたたちは恋人でちゃんとお互い想いあってるんだから……大丈夫だよ」
「……ナツ?」
「男見せなよ、サキ。
いってらっしゃい……!!」
強引に後ろを向かせて、背中をぽん、と押す。
“いってらっしゃい”
その言葉が今の私には精一杯だった。
好きな人たちの背中を押すことがせめてもの恩返しだと思った。
どうか、君が幸せになりますように。
そう願いを込めて、今度は強く強く押した。
よろけたサキが一度だけこちらを見たとき、何かを決意したような瞳をしていた。
その瞳をしているなら、もう大丈夫。



