「俺を呼べ。いつだって飛んでいくから」
「な、んで……っ」
「だから、だから……もういなくなるなよ」
耳元でボソッと呟かれた言葉。
たぶん言うつもりなんてなかったんだろう。
思わず漏れてしまった、というように感じたから。
だけど、サキは琴音の彼氏じゃん。
あの日……キスだってしてたじゃん。
私がいなくたって琴音がいるじゃん。
なのに、どうしてそんなこと言うの?
「サキは……琴音の彼氏でしょ?」
「……」
「だったら、琴音を大事にしなきゃ。
抱きしめる相手、間違えてるよ……さっき琴音見かけたから……いってらっしゃい」
「ナツ……」
本当はこのまま引き止めておきたい。
だけど、琴音のほうがもっとボロボロだと思う。
私なんかよりもずっと。ずっと。
だからこそ、好きな人……サキがいってあげなきゃいけない。



