「俺には全部お見通しって
いつになったら気づくんだよ」
「え?」
「なんにもないのにお前は泣かないだろ」
「……」
そう言われると何も言えなくなる。
私は基本泣き虫な方ではない。
もちろん、それはみんなの前で強がっているだけで、一人になると弱く脆い人間。
「それに、お前はいっつも一人で泣く」
そういうと私の体を自分の胸元にぐいっと引き寄せてそのまま長く程よく筋肉のついた腕で優しく包み込んだ。
サキの柔らかくて落ち着く柔軟剤匂いが私のすべてを破壊させた。
もう、どうだっていい。
神様、どうか。このときだけは私のサキでいさせて。
明日からはまたちゃんと“幼なじみ”に戻るから。
琴音からサキのことを奪わないから……今だけはこのままひとりじめさせて。



