私……全然ダメじゃん。
めちゃくちゃ好きじゃん……サキのこと。
「ダメ、だよ……っ」
「ダメじゃない。
お前が泣いてるのに放っておけねえ」
「……部活は?」
「抜け出してきた。
ナツの声が聞こえてきたから」
そりゃあ、こんなに壁が薄かったら聞こえるよね。
だったら、琴音の声も聞こえていたのかな?
「誰かになんかされたのか?」
「……ううん。なんでもない」
よかった。言い合っていたのが琴音だということはバレていないみたい。
バレていたらなんて言い訳したらいいのかわからなかったからよかった。
サキの手が私の頭の上へと移動し、優しく撫でられる。
弾けたように彼の顔に視線を向ければ、サキは切なげに瞳を揺らして私をジッと見つめていた。
なんで……なんでそんなふうに見つめるの?



