「あんたには帰る場所がある。
愚痴を聞いてくれる人がいる。頼れる人がいる。
泣いたら抱きしめてくれる人がいる。苦しいときに励ましてくれる人がいる」


それはすごくすごく大切なことで、普段はなかなか気づけないことなんだよ。

東京で、私にはそんな人いなかった。
どうやったら明日が来ないかを考えて、何度も一人で泣いて、頼る人もいなくて、誰もいなかった。

そんな私から言わせれば琴音の境遇は幸せだよ。


「何が言いたいのよ……っ」

「素直に話して頼れって言ってんの…!
サキはあんたにとって何なの!?大事なんじゃないの!?彼氏なんじゃないの!?だったら、辛いなら辛いって言って、泣くならサキの腕の中で思いっきり泣けばいいじゃん!!!!」

「……っ」

「それは彼女であるあんたの特権なの!!!
私にはどうやっても手に入れられないの!!!
それに、サキだけじゃない。琴音には健吾もいるし優しいお母さんとお父さんがいるじゃん!!」


私にはないものをすべて持っている琴音が羨ましい。
大好きな人の隣で笑ったり、泣いたり、温かい家庭で日々を過ごす。そんな日常を過ごしている琴音が羨ましくて仕方ない。