欲しいものがなんでも手に入る……みんなから好かれる……か。
琴音の瞳に私はそんなふうに見えているんだ。
だけどね、琴音。それはよく言い過ぎだよ。
私はそんな人間じゃない。
本当に欲しくてたまらないものは手に入らないし、誰からも好かれているわけじゃない。
私だって、一生懸命踏ん張って生きている。
「……いつまでそうやって被害者面してんの?」
私の言葉に琴音の表情が怒りの表情へと変わっていく。
「辛かったら辛いって言えばいいじゃん。
泣きたいなら泣けばいいじゃん。
苦しいなら頼ればいいじゃん。
いつまでも、苦しいのは自分のせいでしょ」
逃げていいんだよ、琴音。
私のように逃げていいんだ。
苦しいなら逃げていい。
一人で頑張ろうとしなくていい。
「分かったような口聞かないでよ……っ!」
そう言って琴音は近くにあった雑草をブチブチと乱暴に引きちぎるとそれを私に向かって投げつけた。
だけど、それは私に届くことはなく虚しくヒラヒラと地面に落ちていった。



