スマホをカバンの中にしまって、一人歩き出す。
まだ家に帰れない。
せめて、花火が終わってから帰らないとおばあちゃんたちに不信感を与えてしまう。

ポロポロ、と溢れだす涙を必死で拭う。

泣いている私をチラチラと見ながら歩いていく人たち。
もう他の人のことなんてどうでもいい。

ただ、この苦しくて辛くてぎゅっと胸が締め付けられる思いを消したりたいけど、脳裏に焼き付いた二人のキスシーンがさらに私の胸を締付ける。


「うぅ……っ」


見たのは私だから、全部悪いのは私。

でも……苦しいよ。

サキを好きでいるのはこんなにも苦しい。
いっそ、ほかの人を好きになれたらいいのに。

やがて、私の歩く道には人がいなくなり私一人ぼっちになった。
どこに行くかなんて決めずに歩いていたのにたどり着いた先はあの海だった。