「ほらよ。ナツはマヨなし」
「え、覚えてたの?」
私はいつもたこ焼きにマヨネーズをかけない。
なんかマヨネーズをかけないほうが私は好きだから。
何も言っていなかったのに覚えててくれてたんだ。
「当たり前。
何年お前のそばにいたと思ってんだよ」
たぶんサキは深く考えていないんだろうけど、その言葉はズルいよ。
今の私にそんなこと言わないで。
それに……過去形にしないで。
これからもずっとそばにいてほしいよ。
叶わないって分かってるから言わないけど、本当はずっと、ずっとサキのそばにいたいし、いてほしい。
「さすが、サキ。
ずっと記憶力魚なのかなと思ってたから」
「はあ?俺だってさすがに3秒でなんて忘れねえよ!」
魚は記憶力が優れていなくて、3秒で忘れてしまうという。照れ隠しで言ったつもりだったけどサキは真に受けちゃうよね。
「嘘だって。
はい、これ。お金」
そう言ってサキに500円玉を渡すけど、彼は受け取ろうとはせずに私の手を押し返した。
「いらねえって。俺のおごり」
「あとが怖いからいいよ」
「こーいうのは男に奢るもんなの」
こう言い出したら、サキは聞かない。
だから仕方なく引き下がるしかない。
「ありがと」
「おう」
どうしてこんなに優しくしてくれるんだろう。
私に優しくする必要なんてないのに。



