「んー、ちょっとだけ待って」


そういうと、サキは私の耳元にずいっと綺麗な顔を寄せてきて、「やっぱ、浴衣似合ってんじゃん」と囁いた。

耳がじんじんと熱を帯びて赤くなっていくのがわかる。

こんなのズルすぎるよ。
しかも、彼女である琴音の前で……。


「し、仕方ないからね。着てきてあげた」

「ぷっ、ほんと素直じゃねぇな」


早鐘を打ち始めた鼓動を必死に抑えようとするけど、一度高鳴りだした鼓動はなかなか鎮まらない。


「せっかくだし、みんなでたこ焼きで食うか」

「いいね」

「じゃあ、買いに行こう」


サキと琴音の手はまだ繋がれたまま。
私と健吾の前を歩く二人はとてもお似合いだ。

クラスのみんなはお似合いじゃないとかいうけど、正直なところ別にそこまで似合わないわけじゃない。

だけど、私だってサキの隣に歩きたいと思ってしまう。

視界に入れたくない。
そんな気持ちでいたからなのか自然と視線を足元に落とす。


「俺でごめんね」


隣を歩く健吾が小さな声で言った。