「それとさ……この前のことほんとに悪かった。
あんな言い方はなかったよな」
健吾は申し訳なさそうに顔を歪ませながら謝罪の言葉を口にした。
その言葉に私は健吾に『戻ってくるな』と言われた時のことだろうと察した。
「ほんとだよ」
「あそこまで言うつもりは……」
「なーんてね。悪いのは全部私だって言ったじゃん。だから健吾は何も気にすることはないんだよ」
そう言って、笑った。
健吾は本当に何も悪くないんだよ。
何も言わずに去っていった私が全部悪いの。
理由があったとしても大切な人たちを裏切るようなことをしてしまったのには変わりないんだから。
「夏葵……お前は昔から優しいよな」
「え?」
「なんか今ふと思った。
だからさ、三年前にも何かあったんだよな」
「……」
「言わなくていいよ。
誰にでも言いたくないことの一つや二つはある。
だけどいつか言いたくなったらいつでも聞くからな」
健吾はそういうとふわっと優しく微笑んだ。
優しいのは健吾のほうだよ。
許せない人にこんなに優しくできる人なんていないよ。
その優しさにたくさん救われてきたんだ。