「気をつけてね。いってらっしゃい」
私は何も言わず、
ただ手を振って家から出た。
さてと、どこに行こうかな。
特に行くあてもなくて、
ぶらぶらと力なく歩く。
三年前とほとんど同じ景色。
右、左、どこを見渡しても緑が視界に入るほど、ここは自然豊かな場所だ。
変わったのは私だけだ。
もう昔の私には戻れない。
「………ナツ?」
後ろから聞き覚えのある懐かしい声が耳を届いて無意識にトクンと胸が高鳴ってしまった。
振り向いちゃいけない…っ。
ここで振り向いたらまたあの時の気持ちが蘇ってきてしまうから。
「…なぁ、ナツなんだろ?」
私は思わず声の主から逃げようと足を一歩前に出して走り去ろうとしたら、すぐに腕をがしっと掴まれてしまった。
そして、肩を持たれてクルリッと体を回転させられてずっとその目で見つめられたかったアーモンドのような瞳と視線が絡み合った。
……ちょっと大人っぽくなったんじゃない?
なんて、言葉は飲み込んだ。
黒髪だった髪の毛も今じゃ茶色く染まっている。
また、そんなチャラチャラしちゃって。
私がいない間にずいぶんと色気づいたね。