「笑わないでよ」

「いや、なんかほんと変わんねえなって」

「いつまでも子供っぽくて悪かったですねー!」

「やっぱ、ナツといるとなんか落ち着くわ」


柔らかく、優しい口調で言ったサキ。

何気なく言ったであろうその言葉は私の胸に響き、徐々に鼓動を高鳴らせていく。

どこまでも優しくて、ズルい男。


「当たり前じゃん。
なんてたってこのナツ様なんだから」

「はいはい。そうだな」

「サラッと流さないでよ。
なんか悲しくなるじゃん」


そう言ってサキの背中をポンッと叩く。
なんかツッコんでもらわないとこっちも困るから。


「ははっ…!ドンマイ」

「うざーい」


どうでもいいような話だって、しょうもない言い合いだって、サキと話していることなら全部楽しく感じてしまうのはもう完全に恋の魔法だ。

どんどんオレンジ色の日が傾いていく中、私たちはふざけあって、笑いあって、家へと続く道をゆっくりと帰った。

きっと、これは幸せというんだろう。
優しく包み込んでくれる彼の誘惑にあっさりと負けてしまっている。

だけど、今はそれだけでいい。
この溢れんばかりの幸せを噛み締めていたいから。