私ごと呑み込んで、すべてを洗い流して何も知らない、きみのことも知らない私になれたらいいのに。
なんて。
きみのことを忘れたってどうせ私はサキにまた恋をするんだろう。この結末になると分かっていても好きになってしまうんだ。
「……ありがとう」
「そろそろ帰るか」
「そうだね」
「昔みたいに一緒に帰ろーぜ」
にこりと優しくて眩しい笑顔を向けたサキ。
その笑顔に一度だけ頷いた。
サキの乗ってきた青色の自転車の荷台に乗る。
そして、サキのワイシャツをぎゅっと掴む。
懐かしい、この景色。
毎日のように見ていたのに。
「あれ?ナツ太った?」
「はぁ?レディになんてこと言うの!?」
いきなりそんなこと言ってくるもんだから思わずペシンとサキの背中を叩いてしまった。
「嘘だって。お前は昔と変わらず可愛いよ」
「なっ…!か、可愛いとかバカじゃない!?
てか、言う人間違ってるでしょ!」
そういうのは、琴音だけに言ってあげないとダメだし、たぶんこれも気まずくならないようにサキが気を遣って言ってくれただけ。
頭の中ではそう分かっているのにドキドキして、心が踊ってしまっている。



