それに会えてもきっと彼を傷つけてしまう。


しばらく歩くと、懐かしい昔ながらの一軒家の前に着いた。

よくここに来ては彼と、最後にはクスッと笑えてしまうようなくだらない言い合いを繰り返していたなぁ。

あの頃は本当に毎日が楽しくて仕方なかった。


「なっちゃん、待ってたよ。さあ、中に入って」


玄関に入るなり、おじいちゃんがニコニコと笑顔を浮かべながら小走りでこちらに向かってきた。


おばあちゃん家の匂いが鼻をくすぐる。

この香り…大好きだったんだよね。

まるで魔法にかけられているかのように、不思議なくらい心が落ち着くから。


「……お邪魔します」


「そんな他人行儀みたいにしないで。
これからは家族として過ごしていくんだから」


……家族、か。

おばあちゃんとおじいちゃんはどうしてこんな私を快く笑顔で受け入れてくれるのかな。


「…ありがとう」


それから、私がこれから使ってもいい部屋まで案内してもらい、荷物を適当な場所に置いた。


今日から私は、ここで暮らしていくんだ。


「なっちゃん、気分転換に散歩してきたらどう?」


そばにいたおばあちゃんが
気を使ってくれたのか提案をしてくれた。


その気遣いを無駄にしてはいけないと思ったので私はコクンと頷いた。