このビー玉は私の全てを知っている。

辛い時も苦しい時も楽しい時もずっと私がお守りとして常に持ち歩いていたから。

生きていると知らなくてもいいことまで知ってしまう。

それが自分を苦しめるときだってある。
知らなくていい感情が芽生えることもある。

生きているのは、苦しくてつらいものだ。

だけど、それと同時に愛おしいとも思える。

この世界が黒で染まらないのはどんなに辛くても苦しくてもそれ以上にこの世界が愛で溢れているからなのかもしれない。


「なんか見えたか?」


突然、後ろから聞こえるはずのない声が耳に入ってきて弾けたように声がした方を向いた。


「な、なんで…」


そこにいたのは、澄んだ瞳で私を優しく見つめるサキだった。


「なんでってテスト終わりと言ったらここだろ」


まさか……まさか……


「いつもここに来てたの?」


私がいなくなってもテスト終わりは毎回この海に来てたの?


「そう。ここにいるとなんか落ち着くんだよな」


私は手のひらにあるビー玉をぎゅっと強く握りしめた。


だって、そんなのずるいじゃん。


動揺している私をよそにサキはゆっくりと私の隣に腰を下ろす。