辛くて、どうしようもなくて、虚しい夜は何度もこのビー玉を見つめてはサキを思い出していた。

たかがガラス玉一つで何が変わるんだ、と言われるかもしれないけど私にとってはサキがくれた元気がでるビー玉なんだよ。

『これ、やるよ。元気玉っつーか、お守り』って、照れながらくれたんだ。

当時のことを思い出して自然と頬が緩んだ。何度も救われた。

バカだなって大袈裟だなって笑われてもいい。それでも私はたくさんこのビー玉一つで……いや、サキに救われたから。


「私の、すべてがここに詰まってる」


ビー玉を持っている手を青い空に向かって伸ばす。

右目を閉じて、左目でビー玉をじっと見つめる。

すると、ビー玉に歪んだ青空が映った。

まるで、私の心の中みたい。


サキのことが好きなのに口にできなくて、サキと付き合っているのに自信をなくしている琴音のことが恨めしいのに琴音に悲しい顔をさせたくなくて気づいたら手助けをしてしまっている。

私の心はもうぐちゃぐちゃなんだよ。

真っ白なキャンパスにいろんな色で塗りつぶされてしまったようなもの。

昔みたいに青色やピンク色で綺麗に染められた心になんて戻れっこない。