それに何故かサキも切ろうとしない。

どちらからとも切れない電話は30秒、1分と時間を紡いでいく。


『はあー、なんで切っちまったんだろう』


今にも切なげな消え入りそうな声が電話から聞こえてきた。


もしかしてサキってば、切ったつもりでいる?

きっと、切れていると勘違いしているんだ。


『せっかく近づけたのにな……』


独り言だとわかっているけど、どうしようもなく胸が締め付けられて苦しくなる。


ますます、サキのことが分からないよ。


彼女がいる身なのに……。


私はこれ以上聞いているときっと泣いてしまうと思ったから意を決して電話を切った。


ねえ、サキは……誰を想っているの?