アスカラール

「難しいと言えば難しいですけれども、なれると案外簡単にできますよ。

私、2回も作りましたしから」

「2回?」

成孔はピクリと眉を動かした。

「バレンタインデーの時にお父さんとお兄ちゃんに作ってあげたんです」

「…ああ、なるほど」

美都の答えに成孔はホッとした様子を見せた。

「よかった、身内で…」

「へっ?」

成孔の呟きに美都は訳がわからなくて首を傾げた。

キキッと、タクシーが到着した。

「ついた」

成孔は財布からお金を取り出すと、運転手に渡した。

「わっ…!?」

彼と一緒にタクシーを降りた美都は驚いた。

目の前にあったのは、60階近くはあろうかと言うタワーマンションだった。

(す、すごい…)

あまりのすごさに呆然となっている美都に、
「行こうか」

成孔はそう言って、彼女の手を引いたのだった。