アスカラール

(まあ、あげる人がいなかったからって言うのが正しいんだけどね)

美都はエプロンのポケットにスマートフォンを入れると、後片づけを始めた。

後は明日の仕事終わりにラッピング用のリボンや箱、それから個装用の袋を買ってオランジェットをつめるだけである。

「成孔さん、喜ぶといいな」

美都は呟くと、フフッと笑った。

「あ…でも甘いものが嫌いとかだったらどうしよう?」

そのことに気づいて、美都は後片づけをしていた手を止めた。

成孔にもし嫌いなものがあって、それが甘いものだった場合はどうすればいいのだろう?

「かちわり氷を食べていたから、大丈夫なのかな?」

それどころか、自分の唇の端についていた飴のかけらを自身の唇でとったのだ。

その点は大丈夫かと思いながら、美都は後片づけを再開した。