オレンジのコンフィチュールを半分だけチョコレートに浸すと、クッキングシートのうえに並べた。

全部つけ終えたら、冷蔵庫に入れて一晩冷やせばオランジェットの完成だ。

バッドを冷蔵庫に入れると、美都はエプロンのポケットからスマートフォンを取り出した。

昼休みに届いた成孔のメールをもう1度確認した。

「明後日か…」

成孔は自分が作ったオランジェットを食べてくれるだろうか?

何より、受け取ってくれるだろうか?

ふと、美都は気づいた。

(…そう言えば、男の人に自分が手作りしたものを渡すのがこれが初めてだな)

学生時代のバレンタインデーは父と兄に手作りのチョコレートをあげていたが、彼ら以外の男にはあげていなかったことを思い出した。