オフィスに到着して自分のデスクに腰を下ろすと、美都はカバンからスマートフォンを取り出した。

「きてない…」

指で画面をタップしてメールの着信をチェックするが、成孔からの返事は届いていなかった。

(まだ見ていないのかな…?)

美都は仕方がないと言うように息を吐くと、スマートフォンをデスクのうえに置いた。

髪を左に寄せてバナナクリップで留めると、美都はパソコンに向かった。

「森坂さーん、昨日の書類なんですけど」

由真が書類を手に美都のところにやってきた。

「何か問題があった?」

美都は由真の方に視線を向けると、声をかけた。

「ちょっとここの部分がわかりにくいんじゃないかと思うんですけど…」

「ああ、これのことね」

美都は由真と一緒に手元の書類を覗き込んだ。