オレはその子にそっと声をかけた。

「なに、してんの?」

すると、驚いたように振り返ったその子は、すごく綺麗で、薄い茶色の長髪と、長いまつ毛からのぞくブルーに近い瞳の色は、触れたら壊してしまいそうなほど繊細なように見えた。そして、彼女はまたふっと表情を戻してみせる。その表情から読み取れるのは小さな憂い。

「別に。ただ此処にいるだけよ。」

そう言うと、彼女は海のほうに向き直ると、今度はその場に座った。オレも何故かその隣に座った。だが彼女は黙ったまま海を眺めている。
何故、彼女は見ず知らずのオレが隣にいることを拒まないのか。何故、彼女はじっと海を眺めているのか。何故オレは、、、。
たくさん浮かんできた疑問は声にならず、オレは海と彼女を交互に見ていた。
そんな時、彼女か言う。

「なんで私を見るのよ。」

オレは、あからさまにテンパリながらも答える内容を探す。

「あぁ、えと、キミの名前が、きになった?」

すると彼女はふっと笑った。

「私は佐倉葉 幸よ。幸でいいわ。君は?」

「オレは、蒼 波瑠っ!」

「そう。よろしく。とりあえず君、学校は行ったほうかいいわよ。」

彼女、、、幸はそう言うとそのまま立ち去っていった。
幸の言葉にはっとしてオレは慌てて学校に向かったが、間に合うはずもなく、担任にこっぴどく叱られた。
この時もオレは彼女のことばかり考えていた。
思えば、この時だ。この時から、既にもう、オレは彼女に惹かれていた。