あの時の美恋が、やたら“女の子”って顔をしたから。
俺には、んなしおらしい顔見せたことないくせに……。
……って、当たり前か。
俺にとって美恋がそうなように、美恋だって俺を男としてなんか見てない。
“女の子の顔”を見せるような相手じゃないんだから。
「っあーー!!くそっ!!」
と、勢いをつけて起き上がろうとしたら、ベッドについた手が滑って、体勢を崩し。
「いでっ!!」
ベッドの下に転げ落ちてしまった。
床に思い切り頭を強打して、思わずうずくまる。
「〜〜〜っ!!」
────わかってんのに。
全部ちゃんと頭では理解してんのに、何かわかんねーけどしっくりこない。
美恋にあんな申し出をする裕也にも。
裕也にあんな顔見せる美恋にも。
そんな二人が、恋愛してんのが簡単に想像つく未来も。
何もかんもしっくりこないのは何でなのか……。
────バンッ!!
「っぶへぇっ!!」
「うわ!びっくりした!って、あんた制服のままそんな所で何してんの?」
突然勢いよく開いたドアから入ってきたのは姉の一花だった。
床にうずくまり、痛みに耐えてる俺を怪訝な顔で見下ろしてる。