「す、好きでもないヤツと付き合うとか普通にダメだろ!?」
「えーそうかな?付き合ってから好きになることもあるじゃん」
「ダメだ!美恋は、恋愛経験がないんだから、付き合ったら隙つかれて何されるかわかったもんじゃねぇ!好きでもないヤツに変なことされてみろ!傷つくのは美恋だろ!」
何やら言い合いが始まってしまった。
変なことって何のこっちゃ。と言いたいところけど、いつになく真剣な様子のジロをポカンと見つめる。
急に必死になっちゃって、ジロってばどうしたんだろ?
「元木ってさ、案外美恋を大切にしてるよねぇ」
にやけ顔でそう言う幸にジロは。
「幼なじみなんだから、当たり前だろ!」
そう言って、再びドカッと椅子に座り直した。
ジロは首の後ろに触れながら、何だか納得いかないような表情で眉間にしわを寄せている。
何であんたがそんなに不機嫌になるんだ。
「じゃあさ」
私の向かい側に座っている高峰くんが、飲んでいたコーヒーをコトンとテーブルに置く。
「俺にしない?」
「……え?」
「美恋ちゃんが恋をする相手、俺じゃダメかな?」
………………はい?
一瞬、時が止まってしまったかと思った。



