そう言って、二人を追い抜こうとしたら。
「あ!美恋待った!」
ジロに腕を掴まれ引き止められた。
「な、何?」
「髪」
ジロの手が、私の髪に優しく触れる。
「風で前髪ボサボサになってんぞ」
そう言って、私の前髪に指を通すジロ。
「まだ恋活中だかんな。自分磨き怠るなよ」
微笑みながらポンと頭に手を乗せられ、何でかわからないけど、胸がキュウっと苦しくなった。
茅野さんがいるのに、私のことなんか気にかけて……ジロって本当バカだなぁ。
「わかってるし!ジロも頭の後ろの寝癖、どうにかした方がいいよ!」
「なっ……!?おまっ……!茅野の前で!!」
バッ!と頭の後ろをおさえるジロにベッと舌を出す。
茅野さんにアハハと笑われ、真っ赤になるジロを残して、私は昇降口へと駆け出した。
ジロの頑張りもあって、いつもよりちょっとだけ早目についた昇降口は、普段登校してくる時間よりも生徒でごった返していた。
下駄箱から上履きを取り出しながら、ガヤガヤと行き交う声に紛れて、無意識に溜息をこぼしていれば。