「ジロ遅いー!これじゃ遅刻するよー!もっとスピード上げろー!!」


「お前なぁ!漕ぐ方の身にもなれ!」



秋が深まり、枯葉だらけの遊歩道を自転車に乗って猛スピードで走り抜ける。


必死に自転車を漕ぐのは、後頭部にちっちゃな寝癖をつけたジロ。


その後ろで呑気にヤジを飛ばしてるのは、もちろん私だ。



「文句言わなーい!ジロが運動不足解消したいって言うから、こうして付き合ってあげてるんでしょー?」


「お前、ついでに楽してるだけだろーが!」


「あはは!ばれたー?」



高い高い秋の空。


色とりどりの紅葉。


爽やかな朝の匂い。



気持ち良いなぁ。


たまには自転車通学も悪くないかも!


私が漕ぐのは勘弁だけど!



「あ。神崎さんちのばあちゃんだ」


「本当だ!おーい!おばあちゃんおはよー!」



自転車のスピードを落とし、後ろから声をかけるとおばあちゃんがゆっくりとこちらを振り返る。



「あら。ジロちゃん美恋ちゃん。おはよう。相変わらず仲が良いわねぇ。今度お菓子あげるから、また二人で遊びにおいで」


「はーい!おばあちゃん、気をつけてお散歩してねー!」