茅野さんとは、うちのクラスで男子から一番人気のある女の子だ。


背中まで伸びた柔らかそうな髪と、フワッとした女の子らしい笑顔が印象的で、女子のお手本みたいな子。



その茅野さんが、一体何だってんだ……。




「いや……な?その……何だ……えーっと……な?」


「何なの?もごもご言ってないでハッキリ言ってよ!」


「あーもう!だから!!」



思わず、ビクッと肩を揺らしてしまった。


首の後ろに手を当て、耳まで赤く染まってるジロ。


余裕がなくて困ってるけど、それすらもどこか楽しそうなジロ。


こんなジロ……初めて見た……。




「……好きになったっぽい。茅野のこと」


「……え?」


「自分でもよくわかんねーんだけど、あの人見てっとドキドキするっつーかなんつーか……。今までこんなことなかったから、俺もよくわかんねーけど……」


「…………」


「多分、これが恋ってやつなんじゃないかなぁという結果に……至りまして」


「…………」


「……美恋?お前、話聞いてる?」



私の肩を掴んだジロが、様子を覗うようにそろりと顔を覗き込んできて、は!と我に返った。