いくら私でもそこまでバカじゃないんだから!!



「な、なんか保健室暑いね!」



このいたたまれない空気を変えるため、場違いな明るい声を出してみる。


とにかくこの変な汗を止めねばと、体育の授業で使うつもりだったヘアゴムで後ろ髪を一つにまとめようと髪をかきあげれば。



「それ……」



高峰くんの顔色が変わった。


私の首の後ろあたりを凝視したまま、眉根を寄せて固まっている。



「……高峰くん?」


「首の後ろ……赤くなってる」


首の後ろ?


あ!!



「こ、これは、ジロに噛まれて……!!」

「ジロ……が?」


高峰くんの瞳が揺れる。


うわぁぁ!余計なこと言っちゃったかも!!


噛み痕とか、何があったんだってビックリしちゃうよね!!



だけど、私の言葉を聞いた高峰くんは、ビックリと言うよりも苦しそうに表情を変えた。



「……は。なるほどね。俺のだって言いたいのか……」



額に手を当てながら、自嘲気味に笑う高峰くん。


どうしたんだろう?



そう思って口を開きかけたその時。



───グイッ!!



私の体が、肩に回された高峰くんの腕によって強い力で引き寄せれた。



え…………?




「高峰くん……あ、あの……」


「美恋ちゃん。俺が今から言うこと、よく聞いて」



私を抱きしめる高峰くんの腕にさらに力がこもる。




「好きだ」


「高峰く……」



「俺は、美恋ちゃんのことが好きだよ」




ゆっくり、はっきりと紡がれた高峰くんのその言葉は、すぐに理解できないほどに衝撃が強すぎて。