「…よろしく」

別によろしくするつもりはないけれど、返す言葉がそれしかなかった。
相変わらず、変わらない表情でただまっすぐどこかを見ている、ハル…くんはとても絵になる。

それ以上、何も聞いてこないので私はせっかくだからと質問してみる。

「ハルくん何歳?」

タメ口で話してみるけど、もし年上だったら敬語に変えよう。
少し間があってハルくんは私が思ってもいなかった答えが返ってきた。

「分からない」

「えっ…えっと、分からないの?」

一瞬呆気にとられて、言葉がどもる。

「うん。

だから、くんとかつけなくていいよ」

…やばい人?

なんて失礼なことを思いながら、私はじりっと少し距離をとる。

自分の年が分からない人っているの?
なんとなくここから逃げ出したくなって私は立ち上がる。

「…私、帰るね。ばいばい」

一方的にそう告げて、私は自転車に乗る。

最低だってことはわかっているが、その雰囲気とかが妙に気味が悪く思えた。