その人はニコリともせず、変わらず無表情のまま首を傾げた。

「隣、いい?」

私は首を縦にする。

またギシッと音がなって、少し距離を置いて私の隣に座った。
そのまま何も話さない。

変な人だなぁ。
横目でその人を見て、私は思う。

…あれから、ここに来るまで人と関わって来なかったからこんな感じで隣に人が居るのは久しぶりだ。

初対面のはずなのに、この無言の時間が心地よい。

相手は口を開いた。

「見ない顔だね。引っ越してきた?」

見ない顔…

あぁ、そうか。こんな小さい村だから大体みんな顔見知りなのか。

「うん、最近」

なぜか警戒心もなく話してしまう。

「東京から来たの」

私は空を見上げる。

青く広がる空は綺麗で。
都会のように高い建物がないから、空が広く見える。視界の半分以上が空だ。

同じ国なのに、なんか違う国みたい。

「東京…。

あ、僕、ハル。君は?」

ブワッと風が吹いて、髪がなびく。
あの場所みたいな濁った風じゃない。透明な風。

横を見るとまたあの色素の薄い瞳が私を捕らえる。
ハルと名乗った人の独特の雰囲気なのか、私はほぼ無意識で、口を開く。

「…ケイ」

吸う空気が軽い。

「ケイ…。よろしくね」