どこからか風鈴の音がする。

それと煩いくらいの蝉の大合唱。

使い古した赤い自転車のかごがガタガタと音を立てながら、坂道を下る。

夏。

入道雲が目の前に大きく広がっている。
その下に広がる田んぼはまだ見慣れない。

新調したばかりの真っ白のセーラー服の袖がパタパタ揺れて、おでこに馴染む汗で前髪がくっつく。

坂道を下りきって、右に曲がれば私の家が見えてくるけれど、左に曲がってしまったのはただの間違いだった。

ペダルから足を離し、乾いた地面に足をつける。

けれど、Uターンする気になれなくて私はもう一度ペダルを漕ぎだした。

この先に何があるのか分からない。

きっとただの好奇心。

水を浴びてキラキラ輝く向日葵を横目に私はまだペダルを漕ぐ。