「……え」


恐る恐る顔を上げた先にいたのは、艶やかな黒髪と白い肌が印象的な男子生徒。

ふむ、西園寺には劣るが、中々の美形じゃないか…って、え!?


――西園寺のヤロウじゃないだと!?


(ななななんでなの西園寺じゃないのかい!真琴は見間違えたの!?そうなの!?どうなのよ…!)


私は心の中で慌てながらも、表では申し訳なさそうに謝る美少女を演じながら、落とした教材を拾い始めた。

ちくしょう、西園寺め。末代まで呪ってやるんだから。

それとも、何枚かにおろして刺身にしてやろうか。

うわ、まずそうだなぁ…。


「――大丈夫?何があった?」


教材を拾うのを手伝ってくれた黒髪の男子生徒にお礼を告げた時、アイツは現れた。


誰が開けたんだか知らないが、斜向かいにある窓から吹き込んでくる風に、淡いブラウンの髪を揺らしながら歩いてくる。

引っこ抜いてやりたいくらいに長い睫毛。

絶対にケアしてるだろと叫びたくなるような、弧を描く唇。


(出たー!)


グッジョブ神様。ありがとう仏様。