「ーーあなたが並木優羽?」


放課後の空き教室。少し開いた窓から吹き込む風に揺られているのは、お日様色のカーテン。その隙間から漏れる眩い光に照らされているのは、学園一の美女。
ここまでは素敵なのにーー。


「そうですが、何か…?」


目の前に居るのはイケメンではなく、女。私を取り巻く複数の人間も、女。どうしてみんな女なんだ。
というか、この状況は何?

私は瞳を潤ませながら首を傾げた。これぞ可愛い乙女の技だ。
私を壁ドンしている女はそんな私の態度が気に入らないのか、舌打ちをするなり、私の真横の壁を蹴る。


「惚けんじゃないわよ。抜け駆けしやがって」

「そうよ! ルールに反しているわ!」

「ちょっと顔が良いからって調子に乗り過ぎ! 中身は男好きなクソのくせに!」


私を取り囲む女子たちが、リーダー格の女に続くように声を上げる。
どれも嫉妬にしか聞こえないのは私だけだろうか。


「ぬ、抜け駆け…? あの、何のことですか?」


何を言われようと、清純可憐な美少女の仮面を剥がすわけにはいかない。
歪みそうになる顔に力を込めて、にっこりと微笑んだ。