教室に戻ってきたらしい王子こと西園寺を迎える女どもが、五限を休んでいた理由や体調の心配をする声がこっちまで聞こえてくる。

恐らく廊下で話しているのだろう。


「…西園寺と居たことは当たってるんだけどね」


「ふむ、やはりそうだったのか。…って、え、西園寺?」


今の今まで私が西園寺と居たと決めつけていたくせに、真琴は素っ頓狂な声を上げた。

私はコクリと頷き、ついさっき入手したばかりのアイツの連絡先を証拠として見せるべく、スマホを取り出した。

チャットアプリの中にある連絡先の一番上に【AOI】とある。

校内の女子にいくらで売れるだろう?


「ゆ、優羽…お主…」


学園王子の連絡先をいくらで売ろうかと考えている私を、真琴は見てはいけないようなものを見てしまったような目で見ていた。

挨拶のメッセージは何て送ろうかな、なんて考えていたら、間違えてゴリラのスタンプを送ってしまった。


「あ、ああ、あああっ…!!」


「ゆ、優羽!?」


並木優羽、人生最大のピンチかもしれない。

ゴリラが【LOVE】と言っている絵のスタンプを送ってしまった。