麗らかな春の日。あたたかな風が吹く屋上の一角で、午後の授業をサボった校内一の美男美女が居た。


「む、無理だよ、西園寺くんっ…、こんなの入らなっ…」


「大丈夫、怖くないよ。並木さん」


「ふぇっ…」


涙目になっている少女の頭を優しい手つきで撫でるのは、眉目秀麗な青年。


「…優しくするから」


撫でるような優しい声に、少女がコクリと頷く。
それを見た青年は、ゆっくりと少女に覆いかぶさり――。


「っ……、」


二人の影が重なった瞬間、少女は顔を顰めた。

縋るように青年のワイシャツを握り、必死に耐える。

青年は少女を労わるように背を摩りながら、熱い吐息を漏らした。


「……ほら、だいじょうぶでしょ?並木さん」


「んっ…、」


恥ずかし気に目を逸らした少女を見て、青年はクスリと笑った。

そして少女の上からゆっくりと退くと、ポケットからティッシュを取り出し、少女に差し出す。


「…無理、しないで。吐き出していいよ。美味しくないんだし」


少女は申し訳なさそうに眉を下げると、躊躇いがちに頷いた。

そして、ティッシュを受け取り。