「あああああ本っ当に鬱陶しいわ!朝からうじゃうじゃと邪魔なのよあの集団っ…!」


芸能人の出待ち…じゃなくて、この学園の王子のご登校の出待ちから十分後。

教室に入るなり開口一番に叫んだ言葉は、みんなの王子様である男と、その取り巻きへの文句だ。

いや、文句ではなく、被害届に書く内容の確認と言った方が正しいか。


「落ち着きたまえよ、優羽(ゆわ)」


「落ち着いてられないんだけど」


「落ち着かねば、皆にバレるぞ。わが校の男子生徒たちの高嶺の花である“並木優羽”が、実はとんでもない腹黒女で野心家でゴリラであることがバレたら…」


「ああああ…」


親友(?)的なポジションに居座っている彼女・真琴(まこと)の言葉に、私はがっくりと肩を落とした。そんな私を見て、真琴は柳眉を跳ね上げると、面白おかしそうに笑う。


「そんな顔をしては、美人が台無しだ」


「大丈夫。こんな顔をしても変顔をしたとしても、男はみんな私にコロッと落ちるから」


何か言おうと口を開きかけた真琴を睨み、私は鞄から手鏡を出した。

するべきことは、もちろん一つ。