これ以上コイツのせいでとんでもない目に遭うのは御免だ。退散してしまおう。
私は西園寺の返事を待たずに背を向け、歩き出したのだが。
「――待って、並木さん」
歩き出した私の手を、西園寺が引き留めるように掴んできた。
こんな展開、前にもあった気がする。
確か保健室に連れて行かれた時だ。
アイツは私を連行しておきながら、倉木に手当てを任せて上から眺めてて…。
デジャヴだ。これをデジャヴと呼ばずして何と呼ぶのだ。
「さ、西園寺くん…?」
曲者め。今度は授業に遅刻させる気か。
口が尖りそうになるのを堪え、西園寺を見上げれば。
彼はこの上ない優雅な微笑みを浮かべると、私の手を引いて走り出した。
「――一緒にサボろう」
「・・・はい?」
手を繋ぎながら廊下を駆け抜けているのは、学校一の美男美女。なんていいシチュエーションなんだ。
と、思いたいところだが。
(ふ、ふざけんなああ!)
いじめに遭う第一歩を踏み出したも同然だ。
おいたわしや、私。