「高橋さんよりは、すきだよ」


「っ……、」


それを聞いた彼女は瞬く間に顔を青くさせ、勢いよくその場から走り出した。

それはそうだ。告白してフラれて、自分よりもその場に居合わせた女が好きだと言われたのだから。


(……って、何してくれんのよ西園寺!!今のこと、あの子がほかの子に喋ったら、私女子から恨まれるじゃない!!)


もしそうなったらどうしてくれるんだ。

私はみんなの天使として生きてきたのに。

そんなことが起きたら、これまでの努力が水の泡になる。


(落ち着け、私。微笑むのよ、並木優羽)


私はそっと息を吐き出し、大きく息を吸い込んだ後、隣にいる西園寺を見上げた。


「……あの、西園寺くん…?」


「うん?」


「今のは、ちょっと困るかな…」


「今?」


西園寺は不思議そうな顔をして、小首を傾げていた。

何なんだ、コイツ。自分が今何をしたのか覚えていないのか。


「その、髪に…ちゅってしたでしょ?」


私は顔を赤らめながら、恥ずかしがる乙女のような素振りで答えた。