「ど、どうしてそんなことが分かるのよっ…!?」


西園寺が、笑っていない。それどころか、まっさらだ。


(こういうの、なんて言うんだっけ…?)


長い睫毛に縁取られている瞳は、何の色も宿していなくて。

スッと通った鼻筋も、形のいい唇も、人形のように、ただそこに在るだけ。


そう、無表情だ。

いつも穏やかに微笑んでいる西園寺が、無表情なのだ。

私は心臓をばくばくさせながら、成り行きを見守った。


「どうしてって…。今は昼休みだからだよ。昼ご飯を買いに、購買へ向かっていた途中だろう」


ね? と言われた私は、即座にコクコクと頷いた。

噓だ、とでも言いたげに高橋さんの顔が歪んだが、事実だからどうしようもない。


「…あと、二つ目の質問だけど」


二つ目の質問って何だっけ、と思った時だった。

私の手を握っている西園寺の手が離れたのだ。

解放されたことに喜びを感じていたが、それどころではない。


(な、な、なななっ…!)


あろうことか、西園寺が私の髪をひと房、指先に絡めたのだ。そしてそれをゆっくりと唇へ近づけると、口づけを落とした。