「なんで盗み聞きをしてた女を庇うの?…その女が好きなの?」
今ここに私たち以外の人がいなくてよかったと、心の底から思う。
こんなどこぞの乙女ゲームのイベントのようなことが起きているんだもん。
主人公は高橋で、恋敵が私。さあどうする? みたいな感じだ。
(あー、もう、面倒な女)
黙って聞いていれば、無茶苦茶なことを言ってくれる。
私はただの通行人だ。なのに高橋と言ったら、ぶつかったことに対して謝らないし、とんだ被害妄想をしてくれちゃってるし、しまいには私を悪者にしてくるし。
(西園寺も西園寺よ。近づくなブスとか、冷たく言っちゃえばいいのに)
ここは私が一肌脱いで、西園寺を助けてやろうじゃないか。
好感度も上がるし、一石二鳥。
「あの、高橋さん。私はね、西園寺くんの――ふぐっ!?」
口を開いた途端、西園寺の手のひらに塞がれ、話を遮られた。
(何をするのさ!)
即座に西園寺を可愛く睨みつけた私は、アイツの顔を見て、思わず息を飲んだ。
だって、西園寺が笑っていなかったから。
「…この件に関して、並木さんは関係ないだろう」



