西園寺に手を引かれて立ち上がった私へと、羨望を越えた嫉妬の眼差しが向けられる。

ああ、怖い。背筋がぞわっとする。

これだから嫌なのよ、恋する乙女って。


だから私は自分が恋をしなくて済むように、誰もが恋してしまうような女の子でいるんだけどね。


「行こう、並木さん」


西園寺は泣いている高橋さんを見向きもせずに、私の手を引いて歩き出した。


なんだか意外だな。

いつも愛想よく笑ってて、誰にでも分け隔てなく話してて。

王子様と呼ばれているコイツにも、冷たい一面があるとは。


まぁ、優しくしちゃうと変に期待させちゃうもんね。

私は心の中で高橋さんへと「ご愁傷様です」と言い、西園寺の後を追ったのだが。


「待ってよ葵依くんっ…!」


なんと、どこぞのホラーゲームに出てくる追跡者のように、高橋さんが追いかけてきた。

それも、悲劇のヒロインみたいな顔をして。


「…まだ何か?」


そう淡々と返事をした後、私の手を握る力が強くなった気がする。気のせいかな。