「どういたしまして。と、言っても…俺は何もしてないけどね?」


「……アオ」


西園寺はおどけたように笑うと、肩をすくめた。そんな西園寺の隣に立つ篠倉は、何の感情も読めない無表情だ。

なるほど、クールな人なのね。って、篠倉のことはどうでもいい。

問題は西園寺なんだから。


(…むむ、このままで終わらせてたまるか)


とはいえ、篠倉が居る今は動けない。

とっとと西園寺と二人きりになって、メロメロにさせなければならないのだから。

ベターだが、ここは“お礼をしたいから連絡先を教えて”的な感じに運ぶべきか…?


どうするべきか悩んだその時、よく聞き知った声と凄まじい速さで駆けて来る足音が聞こえた。

何事かと振り向いた瞬間、勢いよくドアが開く。


「――優羽!!無事かっ!?」


「ま、真琴!?」


そこには、凄まじい形相をしている真琴がいた。

やばい、すっかり忘れてた。ぶつかる直前に電話をしたきりだ。

私は西園寺と篠倉の様子をうかがいながら、真琴の元へと歩み寄った。