「…いや、俺も悪かった。ごめん。怪我はしていないか?」
「だいじょうぶだよ。ほら、この通り……あれ?」
心配そうな目で見てくる男子生徒に、私はエンジェルスマイルを贈った。
そして、予めそこら辺の壁で作っておいた擦り傷を、あたかもたった今負ったかのような素振りで見せる。
ふふふ、素晴らしい。今日の私はなんてエクセレントなんだろう。
最速攻略への道をローラースケートで駆け抜けているような気分だ。
申し訳なさそうに傷を見つめてくる男子生徒を見て、胸が痛んだけれど。
アイツを落とすためなのだ。仕方ない。
「…だいじょうぶだよ?こんな傷、大したことないし」
「いや、でも…」
私は男子生徒を安心させるべく、儚げに微笑んだ後、西園寺をちらっと見た。
西園寺は何があったのか理解したようだが、特に何もせずに見守っている様子。
助けを求められなければ何もしない系男子なのか?
ならなぜモテるんだ、と文句を言いたくなったが、我慢した。
男子生徒と西園寺を交互に見て、もう一度エンジェルスマイルを飾る。トドメの一撃だ。



