それから1週間後。

9時。

何気ない朝だ。

自分の目の前のヘリコプターを除いては。

社会人としてはやや失格気味な時間帯ではあるが、彼にとっては毎日のことであった。

そもそも彼は無職だし、一日中寝ていることだって珍しくはない。

ご近所付き合いなんかよりもパチスロ付き合いの方が濃いし、友達どころか知り合いだって少ない。人間社会で生きていくにはいささか不便で不自由な立場でいながら金にも環境にも何不自由なく暮らしている。

所謂、『遊んで暮らしている』状態だし、『楽して儲けいてる』状態だ。

しかし、誰が彼を羨むだろうか。

彼とて自分の生活を有意義だなどとは思っていないし、ただただ時間が流れゆくのをぼんやりと過ごしていく毎日のどこがいいというのだろう。

彼は非日常を求めていた。

暇で退屈で堪らない毎日などいらないとさえ思っている。

だからといってそのことは彼が無表情なことにはなんら関与していない。これはただの生まれつきであり、生まれた環境による問題だろう。